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淡雪

第17章 誓約

男性がショーケースから出してくれたいくつかの指輪。

ダイヤモンド、パール、ルビー、サファイア...


ーー可愛い。
  どれも璃子さんに似合いそう。


「相手の方の誕生日は?」


「2月です」


僕が答えると


「じゃあ、アメジストがいいかな?」


星形に型どられた紫色のアメジストを小さなダイヤが囲み、その中央にはブルーの石。


「この真ん中のは?」


「ラピスラズリといいうんだ。

 アメジストとラピスラズリの組み合わせは

 災いから守ってくれる力がある」


男性はそう言った。


「これにします!!」


僕は即答した。


ーー璃子さんを護る


「指のサイズは?」


「あ...」


僕は困ってしまった。
実は前回のプロポーズの時もサイズがわからなくて何となく店の女性に聞きながら決めたんだ。

しかも...渡したときにそれが合っていたかなんて確かめる余裕もなく...。


「ま、プロポーズというのは儀式みたいなものだからね。

 サイズが合わなかったら直してあげるから」


男性は優しく笑ってそう言った。


さほど高価ではない石のおかけで
僕の財布にも少し余裕があった。


それを包んでもらい


いままで一言も話さなかった田村くんを見た。


「ありがとうございました。

 いいものが買えました」


「よかったな」


田村くんも笑顔だった。


店を出るとき店主と田村くんが目配せをしていたように見えたのは


気のせいか?!



俺はドキドキしながらその小さな紙袋を持っていた。


「じゃあな!」


田村くんは手をあげて別の方向へ歩いていこうとする。


「え?!田村くん?」


「いまから璃子ちゃんのところへ行くんだろ?

 俺も仕事だ。

 幸せになれよ」


そう言って爽やかに銀座の街に消えていった。





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