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淡雪

第18章 結婚の波紋

病院の駐車場


僕は大きく深呼吸をする。


紙袋の小箱をポケットに忍ばせ


璃子さんの病室をめざした。



ノックをして扉を開ける。



璃子さんは窓の外を眺めていた。



「璃子さん」


僕が声をかけると


璃子さんは振り向き


優しい笑顔を向けてくれる。



ーーやっぱり この人しかいない。



僕も心からの微笑みを彼女に向ける。



彼女のベッド脇に立ち


膝まづく


ポケットから小箱を取りだし

ふたを開ける。


小箱を捧げ



「璃子さん

 僕と結婚してください」



璃子さんを見つめる。


璃子さんはちょっと戸惑っていて


指輪をみつめ



「ラピスラズリ...」



と呟いた。



「ずっと 守るから」



僕はこんなときにできもしない約束なんて...



と心では思ったけど



でもそれも本心に違いないから



そんな男になりたいって願望だから



言葉にした。



「本当に いいの?」



彼女の戸惑いの声が聞こえる。



「璃子さんじゃなきゃ ダメなんだ」



僕は璃子さんを見つめて
そう言った。



彼女は涙をひとつこぼして



「ありがとう...」



消え入りそうな声で呟いた。



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