無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

「そうだな。
　それは俺にもわからない。
　でも、君の子供がほしい。
　純粋な女性としての感情だろうな」

俺は璃子さんを見つめる。

「こんなに辛い思いをしてまで欲しいと思ってくれたなんて...」

医師はまた溜め息をついた。

「なるべく子供に影響が出ないように治療するよ。あとは君が一緒に戦うしかないな」

俺に向かって笑ったあと医師は立ち上がった。

「そうそう、5年前田村くんについていったのはJさんとの約束だったらしいぞ。
　Jさんは田村くんの独立を考えていたらしい。
　田村くんが独立しても困らないようにとてつもないスターダムに押し上げてやれって。
　それができたらもう璃子ちゃんには関わらないって約束してくれたらしい。
　だから彼女は田村くんに着いていった。
　そして見事に契約を履行。
　一生遊べる金をJさんは用意してくれたらしいけどそれを蹴って君と普通に暮らす生活を保証してくれと言ったらしい。
　Jさん呆れて笑ってたって。鈍いケンムが一番の幸せを掴むとはって」

そんな約束を...
知らなかった。

「璃子ちゃんがそこまで惚れたのは君だけだよ。
　自信持て！」

そう言って笑って病室を出ていった。



「璃子さん...」

彼女の頬に手を添える。
規則正しい寝息の合間に苦しそうに歪む顔...

「璃子さん、僕は君が苦しむことなんて
　望んでないよ」

僕の瞳から落ちた滴が彼女の頬を濡らす。

「ごめんね」

小さなうわ言のような声

「家族になりたい」

「家族...」

その言葉の響きが俺の中に何かを灯す。

「そうだね。
　家族になろう」

僕は毎日持ち歩いていた結婚指輪を璃子さんの指にはめ、自分の指にも。
そして璃子さんの頬を撫でキスを落とした。

「家族になろう」