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淡雪

第22章 淡雪

扉が開き医師が入ってきた。

俺を見て大きく溜め息をついた。

「俺も知らなかった。
 今日、璃子ちゃんから聞いたよ。
 璃子ちゃん、しばらく前からピルを飲んでなかったらしい。

 この間はキツいことをいってすまなかった」

医師は俺の向かい側に座った。

「プロポーズの言葉が嬉しかったらしいぞ」

プロポーズ?

「璃子ちゃんは特別な力を持っているから、利用されることが多い。
 それは仕方がないとこだと諦めていたけどな。
 だから人からの好意も素直に受けられなった。
 本心が見えてしまうから。
 本人は純粋に好きだと思って璃子ちゃんに告白するんだけど、その感情は璃子ちゃんが好きというより、自分を解放してくれる彼女が好きなんだと気づいてしまうからね」

何となく、それはわかる気がする。
璃子さんといるとホッとするし落ち着くから。

「だけど君は」

医師は俺を見つめた。

「璃子ちゃんを探すと言ったんだろう?
 璃子ちゃんが何度君を忘れても必ず探すと」

俺も医師を見て

「言いました。
 それが俺の本心だから」

医師はフッと笑って

「すごく嬉しかったんだって。
 特別な力だけを頼るのではなく、悪い面も含めてまるごと受け入れてくれる言葉をくれたのは君がはじめてだったからって。
 彼女も周りが思うほどいい人生は送ってない。
 むしろ逆だ。」

医師は璃子さんの顔を見つめると顔にかかった髪をそっとよけた。

「指環より結婚式より
 その言葉だけで璃子ちゃんは幸せだって言ってた」

俺も璃子さんを見つめた。

璃子さん...。

「だったらなぜ子供なんて...
 俺は璃子さんがいてくれればそれでいいのに...」






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