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淡雪

第4章 俳優 田辺准一

僕は一瞬戸惑いながら槙さんの手を握った。


「全部槙さんのおかげ」


「ん?」


槙さんがとぼけた顔をする


「だってさどう考えたっておかしいよ。

 槙さんの行動 台本の先走りだもん。

 まんまと騙された」


槙さんはニヤリと笑って


「バレたかぁ」


なんて言ってる


「でも本当にありがとう。

 ただのアイドル風情にこんな演技をつけてくれて」


僕はとびきりの笑顔を向けた。

アイドルスマイルじゃなく

はじめてみたときの槙さんのような笑顔


「准一くんはただのアイドルじゃ終わらないよ。

 だから私が呼ばれた。

 みんなあなたの才能見抜いたんだよ」


「え?槙さんが呼ばれた?

 どういう意味?」


「そのうちわかるわ

 またね。いい仕事ができて楽しかった」


槙さんは僕の手を離すと荷物をもって歩き出した。



ーー槙さん、やっぱり

  あなたが好きだ。



小さくなる槙さんの背中に向かって告白した。





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