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淡雪

第5章 槇 璃子

顔合わせの日、坂井賢夢は屈託のない笑顔を向けて私に近づいてきた。

「うちの田辺がお世話になりました」

彼は同じグループのメンバーだが歳は田辺くんより7歳上の22歳。私の2つ下。

「いえ、私は何も。
 彼の才能が見出だされただけです」

私も笑顔で答えた。

「でも知ってますよ。
 ヒット作の陰に 槇 璃子あり」

一瞬ドキリとした。

「何いってるんですか。

 すべては監督さんと俳優さんのおかげです」

「そうですか。
 でもスタッフさんがいなければ自分達は何もできない。
 お世話になります。

 よろしくお願いします」


ペコリと頭を下げた。


「こちらこそ 宜しくお願いします

 いい現場にしたいですね」


私も頭を下げた。

顔をあげると屈託のない笑顔のなかに探るような瞳。

ちょっと面倒かもなんて思ってしまった。

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