齧りかけの林檎
第6章 ● 君の名前 ♂side
今までつきあってきた彼女とも、ピザを食いに行ったことあって
「ほらよこせよ、切ってやる」なんてかっこつけてたのに、
なんで今日に限って
こんなにかっこわるいことになってしまうんだ。
それでもゆりさんはおいしいねーっ、て言いながら
小さな口で、ピザを食べていた。
「わたしね、本当はすごく人見知りで。
仕事がお休みの日は家で本読んでるくらいで、
どこにも出かけないの。
でも、歩くんには結構喋れてると思うんだ。
歩くんに初めて逢ったときに
思いっきり笑っちゃったでしょ?
あれのおかげかな?」
ジェノベーゼとかいう、緑色のパスタをくるくるとフォークに巻きつけながら言ってきた。