齧りかけの林檎
第10章 ● 君にヤキモチ ♂side
耳元で彼女の声を聞いたおれは、
途端に緊張しはじめてしまった。
もしもーし、と聞こえ
ハッ、とすると
「あっ、ゆりさんこんばんは。
今大丈夫ですか?」
「うん、ちょっと待ってね。
外出るから」
少しパタパタと、走っているような音が聞こえる。
どこかに出かけてる?
「もしもし、歩くんどうしたの?」
「なんかうちの兄貴も大根持って帰ってきたんですよ。
なんかさわやかな兄ちゃんからもらったって言ってて」
「へー、もしかして同じ業者さんかなー?
うちに来るの遅かったから、
そのお兄さんの会社にも
行ったのかもしれないね」
「偶然ですね。
ゆりさんは何本もらったんですか?」