齧りかけの林檎
第15章 ● 君の気持ち ♂side
そっか、と小さく言うと
包帯を巻いている手が、
ゆっくりと動き始めた。
「歩のことは、一年の終わりくらいから
ずっと好きだったんだ。
もっと早く、告白してたら
よかったなぁ・・・」
そう言いながら、
包帯止めのテープを貼ってくれた。
「はい、できあがりー」
彼女はおれに顔を見られないようにか、
俯いたまま立ち上がり、
湿布の入った袋などを持って
元の位置に片付けた。
「ありがと」
「うん」
マネージャーはまだ、向こうを向いたまま。
おれは立ち上がると、
背中を向けたままのマネージャーに向かって
「香澄、
好きになってくれて
ありがとう」
そう言って、保健室から出た。