齧りかけの林檎
第2章 ● 真っ赤な君 ♂side
「大丈夫!?もしかして走ってた?
バナナがあるのかと思うくらい
見事な転び方だったよー!
ケガしてない?立てる?」
初めてはっきりと聞いた、彼女の声。
いつもあの図書館の男の人と話してる時は
声が小さいのか、
あまりちゃんと聞けなかった。
ずっと、君の声が
聞きたくて、聞きたくて。
まさか今おれに言ってる!?
でもこんな嬉しい状況にも関わらず
今すぐにでも逃げたい気持ちだった。
最悪だ、
かっこわるすぎる
だってだいすきな彼女は
おれに話しかけながら笑っている。
というか、
笑われている。
確かに、彼女の言うように走っていた。
だって君に早く逢いたかったから。