齧りかけの林檎
第15章 ● 君の気持ち ♂side
おれは今までにないくらい緊張して、
出来れば今すぐにでも逃げ出したかったけれど、
腕の中にゆりさんが居るっていうだけで
すっごく嬉しくて、幸せで、
腕の中にゆりさんが居るってことを確かめたくて、
思いっきり抱きしめた。
固まったまま、全く動かないゆりさん・・・。
蛇口からは、ジャージャーと水が流れっぱなしになっていて
これじゃ水道代心配なんですけど、って
なんか急に冷静になってしまった。
おれは手をぐーーーって伸ばして、
蛇口の水を止めた。
おれが襲うと勘違いしたのか、
彼女が体をもっと固くしたから
おかしくて、
「水、出っ放し」
って言って、
別に怖いことはしてないよって
わかってもらおうとした。