齧りかけの林檎
第15章 ● 君の気持ち ♂side
おれは甘えんぼなゆりさんのお願いを叶える為に、
さっき昼ごはんを作った時に
冷蔵庫にしまっていたポカリを持って、
彼女に渡した。
「はい、ポカリ持って来たよ。
こっち向いて?」
泣いた後の顔が見たくて
そう言ったのに、
彼女は俯いたまま
ポカリのキャップを開けた。
ゴクゴクと飲みながら上がる顔に、
おれは目を合わせようとした。
バチッと目線が合うと
彼女は少しゴホッ、とむせた。
かわいい、緊張してるの?
やっとゆりさんと目が合った。
ゆりさんにすきって言ってもらえてから、
はじめて目が合った。