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祠の鬼

第8章 傍観者

誰もいないはずだった。



だが、次の瞬間にはもう視界に映っていた。



尋暁は驚きもせず、ただ不快そうに少年を見つめる。



紫黒の髪に、どこまでも昏い深淵の瞳。



「心外だね、僕の主義を通してるだけなのに。中途半端なまま、生きる誰かさんにそんな事言う資格あるの?」

「……オレは中途半端なんかじゃない」

「自覚ないんだ。何も識らないのって、かわいそうだよね?“暁風”」

「……その名で呼ぶな」

「それも君の名なのに?境界線は引いてるつもりだけど。一応、いつの時代でも僕はただの傍観者だしね」

「うるさい」

「はいはい、じゃあそろそろ邪魔者は退散するよ――またね」



始めから何事もなかったように、さっきの出来事がすべて夢でもあったかのように、何も変わらなかった。



響より遅れて古書店に入る。



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