アイドル様の、ホントのお顔
第3章 ~REN~
「はーい。 じゃあ、今度はこっち向いて撮ってみようか。」
「………………」
俺…何でここにいるんだろう。
「そうそう!! いい感じ!!」
いや、まあ…今写真を撮られまくってる大人気アイドル様に無理矢理連れて来られたわけですが。
「よし。 じゃあ、衣装チェンジ入りまーす。」
それにしても…
さすが人気アイドル。 女性スタッフは顔を赤らめているし、男の俺でもカッコいいと思う。
……性格最悪だけどな。
「こちらへどうぞ。」
衣装係りの女性スタッフに案内されて、衣装を替えに行くあいつ。
「…………」
「退屈ですか?」
「!! あ、いえ…」
特にすることもなく、スタジオの隅であくびをしていると、西さんが声をかけてきてくれた。
「いいんですよ。 RENのわがままにつき合わせてしまってすみません。」
「……西さんも大変ですね。」
あんな奴のわがままを、ずっと聞いているのだろうか。
俺だったら耐えられないな。
「そうでもないですよ。 それに…」
「?」
それに…?
「RENがあんなわがままを言ったのは初めてなんです。
私に家まで誰かを迎えに行かせたことも、誰かを撮影現場に連れてきたことも。」
そう言って、優しく微笑んだ西さん。
でも…
「っ…」
目が笑っていなかった。
冷たく…俺を睨みつけてくる。