
20年 あなたと歩いた時間
第11章 手探りの日々
アップシューズを履いて、
ひとけのまばらなグラウンドで
念入りにストレッチをする。
息を深く吐いたり吸ったりしていると、
だんだんと体が温まって、
走るモードになっていく。
僕は何となくこの時間が好きだ。
ドリルをして、百メートルを十本流して、
懸垂。二百メートルを五本。
いやなこと、全部体の後ろに流れていく。
(わかるだろ?その感じ)
うん。わかる。生きてるって感じ。
タオルで汗を拭いて、空を見上げる。
あいつの声が聞こえた。
桜の季節が一番好きだ。
だから自転車通学の川沿いの道も、
花びらが散るまでは歩いて通う。
あいつも桜が好きだった。
初めて僕の中にあいつが現れたのは
中学に入る前の春休みだった。
父さんの叔母さんに初めて会って
その時、僕はあいつの人生の続きを
生きると宣言した。
確かに僕の意志だったのに
それだけではない気がしたのだ。
目には見えない力
抗うことのできない流れ。運命。
たった二十歳で終わらせなければならなかった人生を、つなぎたい、と思う執念。
僕はその時思った。
あいつが僕を、作ったんだ、と。
父さんというには若すぎた。
流星と名前を呼ぶのも、なんか違う。
未だに呼び名は決まっていない。
でも、ものすごく近くにいるような気がした。
呼び名なんて、何でもいいよ、
と言われた気がした。
それからだ。
知りたくて仕方がなかった。
興味があった。
毎日毎日、母さんや要にあいつのことを
聞いた。
でもやっぱり、ぴんとこないことが
多かった。あれから三年。
ひとけのまばらなグラウンドで
念入りにストレッチをする。
息を深く吐いたり吸ったりしていると、
だんだんと体が温まって、
走るモードになっていく。
僕は何となくこの時間が好きだ。
ドリルをして、百メートルを十本流して、
懸垂。二百メートルを五本。
いやなこと、全部体の後ろに流れていく。
(わかるだろ?その感じ)
うん。わかる。生きてるって感じ。
タオルで汗を拭いて、空を見上げる。
あいつの声が聞こえた。
桜の季節が一番好きだ。
だから自転車通学の川沿いの道も、
花びらが散るまでは歩いて通う。
あいつも桜が好きだった。
初めて僕の中にあいつが現れたのは
中学に入る前の春休みだった。
父さんの叔母さんに初めて会って
その時、僕はあいつの人生の続きを
生きると宣言した。
確かに僕の意志だったのに
それだけではない気がしたのだ。
目には見えない力
抗うことのできない流れ。運命。
たった二十歳で終わらせなければならなかった人生を、つなぎたい、と思う執念。
僕はその時思った。
あいつが僕を、作ったんだ、と。
父さんというには若すぎた。
流星と名前を呼ぶのも、なんか違う。
未だに呼び名は決まっていない。
でも、ものすごく近くにいるような気がした。
呼び名なんて、何でもいいよ、
と言われた気がした。
それからだ。
知りたくて仕方がなかった。
興味があった。
毎日毎日、母さんや要にあいつのことを
聞いた。
でもやっぱり、ぴんとこないことが
多かった。あれから三年。
