テキストサイズ

20年 あなたと歩いた時間

第11章 手探りの日々

だから、走ることに逃げているような
気がする。
0時間目の数学は、抜き打ちテストがあった。
三年生で習った内容だったにもかかわらず
結果は散々だった。
そのあとも、午前中は春の陽気が眠気を誘い
午後イチは、ゆいのクラスの体育が
窓から見え、当てられたのに聞いていなくて
先生に嫌みを言われた。今日はツイてない。

「どうしたの?ボーッとしてる」

部活が休みの放課後まで
何とか一日をやり過ごし、ゆいと二人で
部屋でDVDを観ているのに
内容が頭に入ってこない。
僕は、心配そうにのぞきこむゆいに
思わずキスをした。
止まらなかった。
甘い唇を貪るようにしてキスを続けた。
そのまま肩をゆっくり押すと
ゆいは素直に押し倒されて
僕を見上げるかたちになった。
そっと、両耳から補聴器を外す。
それを合図に、ゆいは目を閉じる。
僕はシャツを脱いで、再びキスをする。
キスをしながらゆいの薄手のセーターを
まくりあげた。下着をずらして
あらわれた頂に舌を這わせると
ゆいは小さく息をこぼした。
流れっぱなしのDVDが映す
ビルが崩れ落ちるシーンが視界の端に入る。

「ゆい…」

補聴器を外すと、僕の声は届かない。
だから耳元に唇を当てて、
言葉を直接ふるわせる。

「ごめん、我慢できない…」

ゆいは頷き、僕は手早く避妊具を着けた。
もう準備はできていて、ゆいの中は温かく
湿っていた。

「コウ…キ」

こんな自分も、嫌いだ。
学校では、普通に笑い合える友達がいて
陸上部ではさわやかに汗を流している。
それを遠くから見つめる知らない女子に
告られて、ごめん、彼女いるからと断って
どんどん身長が伸びて声が低くなって
友達にまで『最近なんか変わったじゃん。
男っぽくなった?』
とか言われるようになって。
それなのに、ゆいの前では余裕なくて
自分の欲望を剥き出しにしている。
全然かっこよくなんかない。むしろ、

ストーリーメニュー

TOPTOPへ