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20年 あなたと歩いた時間

第1章 14歳

店の中はひんやりしていて気持ちがいい。
私がショーケースの前で
何にしようか迷っていると、
要はすでにコーンのトリプルを
手にして奥のテーブルにどかっと
腰を下ろしていた。
私はキャラメルリボンと
ストロベリーのカップを持って
要の隣に座った。

「どうしたの?何で黙ってるの?」
「…別に」
「話して」
「…流星には言うなよ」
「うん…」

流星には言うなよ、と釘を刺され
思わず頷いてしまったが、
四人の中で隠し事は今までなかった。

「多分あいつ、堀川とつきあってる」
「ま、真緒が?まさか。そんなの聞いてないよ?」
「おれもだよ。けどバスケ部のやつらが見たって」
「そうなんだ…」
「おれ…真緒のことが好きなんだ」
「えぇっ?!」

私は、そのほうが数倍驚いた。
あ、だからあんなにスピード出して、
無言になったのか。
がくん、と肩を落としてその顔からは
完全に笑顔が消えている。
要は手に持ったアイスを全く
食べていなかった。
一番下のチョコミントが
溶けそうになっている。

「要、アイス…」
「あ、あぁ…」

普段ちゃらけているだけに、
落ち込む要はちょっとかわいそうに
見えた。

「昔はさ、真緒のこと苦手だったんだ。…あいつ、姉ちゃんみたいじゃん。説教とかするし…けど、中学に入ったくらいからそれがいやじゃなくなって…気がついたら好きになってた」

ぽつり、ぽつりと要は話した。
わからなくはない。
真緒は優等生タイプの流星より、
どちらかと言うと四人の中では
弟のような存在の要を気にかけていた。実際真緒は三人姉弟の長女で、
私にも何かと世話を焼いてくれる。
要は、そんな真緒を好きになってたんだ…。

その時、窓の外を流星が
自転車で通りすぎていった。
私はとっさに店を出て流星を
呼び止めた。

「のぞみ。何してる?」
「要とアイス食べてる。流星、いま合宿から帰ってきたの?」
「いや、午前中に学校に戻ってたけど色々あって」
「流星も食べよ?」
「制服だけどいいかな」
「大丈夫、大丈夫!」

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