
20年 あなたと歩いた時間
第1章 14歳
私は要に『流星には言うな』と
言われたことを既に忘れていた。
「おぅ、お疲れ」
要が平静を装って言った。
「要…なに落ち込んでんだ?」
しかし流星はひとめ見て要の状態を
見抜いた。それにつられて私はつい、
「失恋したんだよ、要」
と言ってしまった。
「おい、のぞみ、言うなっつっただろ!」
「あ…ごめん」
「失恋って、真緒に?」
そのやりとりを見て流星は何の疑いもなく
言った。
「のぞみっ、おまえ言うなって…」
「言ってない言ってない」
私は慌てて否定した。
「堀川先輩だろ。要、相手が先輩じゃあ無理だな。あきらめろ」
「…わかってるよ、流星に言われなくても。帰る。のぞみ、流星に送ってもらえ」
「え、あ!ちょっと、要!」
要は結局アイスをそのままゴミ箱に投げ入れて
店を出ていった。残された私と流星は
何も言わずに後ろ姿を見送った。
「すぐ立ち直るだろ。気にすんな」
「うん…でも、あんな要初めて見た」
「ほら、帰るぞ」
流星は勉強道具の入った私のかばんを持って
歩き出した。
太陽は、まだまだ傾きそうになく
額に汗が滲んだ。流星の制服は
汗で背中にはりついていた。
その背中をなんとなく眺めながら、
自転車を引く流星のうしろを歩いた。
初めて、四人の間に隙間ができたような
気がして不安になった。流星も同じことを
思っていたのかも知れない。だけど、
要のことは何も言わなかった。
いつも学校帰りに寄る公園の前まで来たとき
流星が立ち止まって言った。
「合宿に南高校の先生が来てた」
「陸上部の?」
「うん。時期はまだ早いけど考えておいてくれって」
「そうなんだ」
南高校は県立で偏差値のレベルはそんなに
高くはない。
ただ、スポーツが盛んで陸上競技だけでなく
他でもインターハイに何人も出場している。
「行く気はないけどな。偏差値低すぎ」
「流星はどこだって行けるよ。成績いいもん。私は…高校受験なんて、まだ先でわかんない」
正直に言った。
だってあまり勉強は好きではないし、
成績も中の中。
たぶんそのとき行けそうな高校を
目指すんだろうな。
言われたことを既に忘れていた。
「おぅ、お疲れ」
要が平静を装って言った。
「要…なに落ち込んでんだ?」
しかし流星はひとめ見て要の状態を
見抜いた。それにつられて私はつい、
「失恋したんだよ、要」
と言ってしまった。
「おい、のぞみ、言うなっつっただろ!」
「あ…ごめん」
「失恋って、真緒に?」
そのやりとりを見て流星は何の疑いもなく
言った。
「のぞみっ、おまえ言うなって…」
「言ってない言ってない」
私は慌てて否定した。
「堀川先輩だろ。要、相手が先輩じゃあ無理だな。あきらめろ」
「…わかってるよ、流星に言われなくても。帰る。のぞみ、流星に送ってもらえ」
「え、あ!ちょっと、要!」
要は結局アイスをそのままゴミ箱に投げ入れて
店を出ていった。残された私と流星は
何も言わずに後ろ姿を見送った。
「すぐ立ち直るだろ。気にすんな」
「うん…でも、あんな要初めて見た」
「ほら、帰るぞ」
流星は勉強道具の入った私のかばんを持って
歩き出した。
太陽は、まだまだ傾きそうになく
額に汗が滲んだ。流星の制服は
汗で背中にはりついていた。
その背中をなんとなく眺めながら、
自転車を引く流星のうしろを歩いた。
初めて、四人の間に隙間ができたような
気がして不安になった。流星も同じことを
思っていたのかも知れない。だけど、
要のことは何も言わなかった。
いつも学校帰りに寄る公園の前まで来たとき
流星が立ち止まって言った。
「合宿に南高校の先生が来てた」
「陸上部の?」
「うん。時期はまだ早いけど考えておいてくれって」
「そうなんだ」
南高校は県立で偏差値のレベルはそんなに
高くはない。
ただ、スポーツが盛んで陸上競技だけでなく
他でもインターハイに何人も出場している。
「行く気はないけどな。偏差値低すぎ」
「流星はどこだって行けるよ。成績いいもん。私は…高校受験なんて、まだ先でわかんない」
正直に言った。
だってあまり勉強は好きではないし、
成績も中の中。
たぶんそのとき行けそうな高校を
目指すんだろうな。
