
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
「困ったね…なんで流星が…」
会計の順番待ちの間、母さんはそればかりだ。
「…仕方ないよ。治すしかない。足、残したい、おれは」
「そうだけど…」
膝には腫瘍が見つかった。
症状がごく初期で、転移は今のところないから
化学療法で好転したら手術をする、という
ことだった。
最悪の場合は膝下の切断もありえると
言われた。
母さんは普段僕には厳しいし、
傾いている会社を切り盛りする父さんの、
最強の右腕だ。
その母さんが、診察室で涙を流した。
その方が僕には驚きだった。
検査から治療方針の説明に至るまで、
1日がかりだった。
もうこれから学校に行っても六時間目が
始まっている。
欠席すると学校に電話をして、
戻ってきたときには母さんはもう、
いつもの母さんになっていた。
「流星。あんた、母さんが思ってるより強いんだね」
そう言って、帰りにお寿司食べて行こう、
と笑った。
大丈夫。絶対に治る。
病気で立ち止まっている暇なんてない。
転移とか切断とか5年生存率とか、
そんな単語が頭の中をかけめぐった。
だけど。
怖くなんてなかったのは、君がいたからだ。君のために早く大人になりたいと、
あの日からずっと思っていた。
この病院で、お母さんを亡くした君が、
僕にしがみついて泣いたあの日から。
僕は、絶対に君をひとりにはしない。
君を、死なせたりはしない。
それなのに、先に死ぬのは僕の方だなんて。
会計の順番待ちの間、母さんはそればかりだ。
「…仕方ないよ。治すしかない。足、残したい、おれは」
「そうだけど…」
膝には腫瘍が見つかった。
症状がごく初期で、転移は今のところないから
化学療法で好転したら手術をする、という
ことだった。
最悪の場合は膝下の切断もありえると
言われた。
母さんは普段僕には厳しいし、
傾いている会社を切り盛りする父さんの、
最強の右腕だ。
その母さんが、診察室で涙を流した。
その方が僕には驚きだった。
検査から治療方針の説明に至るまで、
1日がかりだった。
もうこれから学校に行っても六時間目が
始まっている。
欠席すると学校に電話をして、
戻ってきたときには母さんはもう、
いつもの母さんになっていた。
「流星。あんた、母さんが思ってるより強いんだね」
そう言って、帰りにお寿司食べて行こう、
と笑った。
大丈夫。絶対に治る。
病気で立ち止まっている暇なんてない。
転移とか切断とか5年生存率とか、
そんな単語が頭の中をかけめぐった。
だけど。
怖くなんてなかったのは、君がいたからだ。君のために早く大人になりたいと、
あの日からずっと思っていた。
この病院で、お母さんを亡くした君が、
僕にしがみついて泣いたあの日から。
僕は、絶対に君をひとりにはしない。
君を、死なせたりはしない。
それなのに、先に死ぬのは僕の方だなんて。
