
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
高校の入試と中学の卒業が見えてきた3年生の
秋が終わろうとしている。
僕ら四人は無謀にも同じ高校を
目標にしていた。
無謀、というのは、要とのぞみのことだ。
「だーかーらー、これとこれは一緒にしちゃいけないんだって!」
「しーっ!真緒」
隣で真緒がヒステリックに要の問題集を
見ながら言った。
日曜日の図書館の自習室は、こんなに人が
いるのに静まりかえっている。
そこに、真緒の声が響いた。
最近は要とのぞみの成績が上がってきて、
やっと市高の合格圏内に入ってきたのだ。
僕は理数科、真緒は英語科、要とのぞみは
普通科。
ここまで来たら絶対四人で市高生になろうぜ!
と張り切る要が一番心配なのだけれど。
「あ、のぞみ。これ違う。これはさ、この括弧ごと代入するんだ」
「そっか。じゃあ…ここもだ」
のぞみの集中力はすごい。
放っておいたらいつまでも問題を
解いている。
こなした過去問の数は一番かもしれない。
僕は一応理数科にはA判定が出ているけど、
あと4ヶ月でまわりがどう伸びてくるか、
逃げ切れるかどうかが勝負どころなのだ。
「痛っ…!」
その時膝に痛みが走った。
時計を見ると、薬を飲む時間を大幅に
過ぎていた。
「最近よく、膝、痛がってない?」
向かいに座る真緒が、机の下で僕の足を
つついた。
「成長期だからさ、骨が伸びて皮膚が追い付いてないんだよ。夜中に、足がキシキシ言ってるもんな。…トイレ行ってくる」
あながち嘘でもない言い訳をして、
僕はポケットに薬を確認して席を立った。
膝の腫瘍は、この1年でかなり
小さくなっていた。
手術も切断も免れそうだ。
これは奇跡に近いらしい。
だけど僕には再発という恐ろしい可能性が
残されている。
トイレから出ると、真緒がいた。
「流星。大丈夫?」
「何が?」
「ちょっと痩せたかな、って」
「勉強しすぎて、脳が糖分使ってんじゃね?」
「要が心配してた。流星、新聞配達してるの?」
「あー、まあな。もうすぐクリスマスだし」
秋が終わろうとしている。
僕ら四人は無謀にも同じ高校を
目標にしていた。
無謀、というのは、要とのぞみのことだ。
「だーかーらー、これとこれは一緒にしちゃいけないんだって!」
「しーっ!真緒」
隣で真緒がヒステリックに要の問題集を
見ながら言った。
日曜日の図書館の自習室は、こんなに人が
いるのに静まりかえっている。
そこに、真緒の声が響いた。
最近は要とのぞみの成績が上がってきて、
やっと市高の合格圏内に入ってきたのだ。
僕は理数科、真緒は英語科、要とのぞみは
普通科。
ここまで来たら絶対四人で市高生になろうぜ!
と張り切る要が一番心配なのだけれど。
「あ、のぞみ。これ違う。これはさ、この括弧ごと代入するんだ」
「そっか。じゃあ…ここもだ」
のぞみの集中力はすごい。
放っておいたらいつまでも問題を
解いている。
こなした過去問の数は一番かもしれない。
僕は一応理数科にはA判定が出ているけど、
あと4ヶ月でまわりがどう伸びてくるか、
逃げ切れるかどうかが勝負どころなのだ。
「痛っ…!」
その時膝に痛みが走った。
時計を見ると、薬を飲む時間を大幅に
過ぎていた。
「最近よく、膝、痛がってない?」
向かいに座る真緒が、机の下で僕の足を
つついた。
「成長期だからさ、骨が伸びて皮膚が追い付いてないんだよ。夜中に、足がキシキシ言ってるもんな。…トイレ行ってくる」
あながち嘘でもない言い訳をして、
僕はポケットに薬を確認して席を立った。
膝の腫瘍は、この1年でかなり
小さくなっていた。
手術も切断も免れそうだ。
これは奇跡に近いらしい。
だけど僕には再発という恐ろしい可能性が
残されている。
トイレから出ると、真緒がいた。
「流星。大丈夫?」
「何が?」
「ちょっと痩せたかな、って」
「勉強しすぎて、脳が糖分使ってんじゃね?」
「要が心配してた。流星、新聞配達してるの?」
「あー、まあな。もうすぐクリスマスだし」
