テキストサイズ

20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

「では、しっかり勉強してたまには息抜きもして、事故のないように三学期迎えような。解散!」

担任が成績表を配り終わり、いよいよ
中学最後の冬休みがくる。冬休みが明ければ
私学の入試が始まる。
いつものように四人並んでの帰り道、
のぞみがいきなり言い出した。

「クリスマスパーティーしない?」
「するする!受験生でもクリスマスしていいよな。な?流星っ」
「…いいんじゃね。おれは予定なし。真緒は?」
「午前中模試があるけど…する」

のぞみと要が、僕と真緒の前に
回り込むような形になり、うしろ歩きで
パーティーの段取りを話した。

「プレゼントは、なしね。私たちお金ないし、買いに行く時間もないから。だから…」

のぞみが珍しく仕切ろうとしている。

「あげたいものを紙に書いて、封筒に入れて交換するの。面白いでしょ?」
「なんだー、絵に書いたモチなんていらねーよー。なあ、真緒?」
「楽しそうじゃん。何だっていいんでしょ?なんかワクワクするー」

のぞみにしては、面白いことを考えるな。
…いや、僕に対する気遣いかもしれない。

「ケーキはね、私が焼くから。要と流星は飲み物用意してね」
「あ!私もケーキ手伝う」
「ありがと、真緒」

じゃあねー。明日、お昼に要んち集合ー、
と真緒が言いながら要と二人で角を
曲がっていった。

「ありがとな、のぞみ」

スニーカーの紐がほどけて、
しゃがんでいるのぞみに僕は礼を言った。
その手を止めて、のぞみは顔を上げた。

「ん?なんで?」
「いや、なんとなく…」

思い過ごしか。カッコわり。

「ねえ、流星」

靴紐を結んで立ち上がったのぞみが、
小さくなったような気がした。
いや、僕の背が伸びたんだ。

「冬休み、一緒に勉強しよ」
「お、おぅ。ていうか、のぞみは冬季講習とか行かないの?」
「んー、塾行くと焦るの。だから行かない」
「そか」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ