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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

寒っ、と言いながら小さな両手を合わせて
息を吹き掛けるしぐさが、
僕的にはドストライクで、二人になった
このタイミングでされたために、
僕は健全な15歳の欲求を抑えるのに
必死だった。

「成績、どうだった?」

いつもの公園に差し掛かった時、
のぞみが聞いてきた。

「ん…まあ。それなり」
「何?!それなりって!見せて見せて」

のぞみが僕の鞄を開けようとした。

「ちょ、やめろよ。わかったわかった…あっ!」

その拍子にのぞみの足がもつれてよろけ、
咄嗟に僕が抱き止める格好になった。

「あ、ありがと…」

ヤバい。心臓がばくばくしてる…
のぞみに聞こえる…!

「は、離してもらえる…かな」

そう言われて初めて、僕の腕のなかには
のぞみがまだいたことに気づいた。

「うわ…ごめん」

それでものぞみはその手にしっかりと
僕の成績表を持っていた。

「わー!音楽が4であと全部5?すっごーい!やっぱり流星だねー」

すぐに体勢を元に戻して、割と普通に
成績表を見て驚いている。
さっき、この腕でのぞみの体重を支えた感触が
まだはっきりと残っているのに。
…柔らかな重みが。

え、1学期も2学期もそうだったの?!
すごいすごーい!私も頑張らなきゃ…

のぞみは僕の成績表なんかで、
こんなにも笑っている。
すごいすごいと笑っている。
あ。
この笑顔があれば、僕は頑張れるんだ。
頑張るから、のぞみは笑ってくれるんだ。
県大会の決勝もそうだった。
この笑顔が、僕に力を与えてくれた。

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