
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
「『いつも隣に永遠にぼくはいるから』…」
最後のフレーズを、のぞみが小さく歌った。
そして、ピッ、ピッと充電が切れる音がして
CDは動きを止めた。
「あーあ、終わっちゃった…」
「のぞみ…」
「ん?」
のぞみの声が響いた。
いつの間にか僕の肩に頭を載せていたのぞみは
イヤホンを外した。
その手を、僕は自分のポケットに入れた。
僕の手にすっぽり収まる手は冷えていた。
今まで何度、この手を引いてきただろう。
一番最初の記憶は、公園で木に登ったのぞみが
降りられなくなって泣いていたときだった。
その手を一生懸命僕の方にのばして、
助けを求めた。
『こわくないから!ぼくのてをつかんでジャンプしろ、のぞみ!』
あの時から僕の手はずいぶん大きくなったけど
のぞみを守るための手であることに
変わりはない。
「永遠に隣にいられるかな…」
握る手に力をこめて、僕は思わずつぶやいた。
「ん…?なに?」
「なんでもない。…のぞみ…」
「ん…っ」
僕は体をねじって、のぞみの唇に僕のそれを
重ねた。
何度目かのキスは、沈んでゆく夕日が
まぶしかった。
こんなにも幸せなキスをしているのに、
永遠にそばにいられるかと聞かれても
答えられないのが、悲しかった。
唇から頬に、目に、耳に、髪に。
のぞみの全部に口づけたかった。
僕のものだとしるしをつけたかったが、
そのすべを僕は知らなかった。
だけど、のぞみの首にかかる髪をそっとよけて
白くてほっそりしたそこに口づけると、
のぞみは僕が今までに聞いたこともないほど
頼りなく、小さな叫び声をあげた。
僕は、のぞみもこうすることが
嫌いじゃないんだということを知った。
それから、次はここと誘導するかのように
喉を上げ、僕は蜜に誘われた蝶のごとく
吸い寄せられた。
ポケットの中で僕の手を握るのぞみの手に
力が入った。
こんな気持ちがあったんだ。
好きだとか、大切にしたいとか、
そんな気持ちの向こうに。
もっと触れていたい、もっと感じたい、
もっと重なりたい…
「りゅうせ…」
僕の名前を呼ぼうとしたのぞみの唇を、
再び僕はふさいだ。
もっと感じたい、もっと重なりたい…
深く、長いキスを僕らは止めることが
できなかった。
最後のフレーズを、のぞみが小さく歌った。
そして、ピッ、ピッと充電が切れる音がして
CDは動きを止めた。
「あーあ、終わっちゃった…」
「のぞみ…」
「ん?」
のぞみの声が響いた。
いつの間にか僕の肩に頭を載せていたのぞみは
イヤホンを外した。
その手を、僕は自分のポケットに入れた。
僕の手にすっぽり収まる手は冷えていた。
今まで何度、この手を引いてきただろう。
一番最初の記憶は、公園で木に登ったのぞみが
降りられなくなって泣いていたときだった。
その手を一生懸命僕の方にのばして、
助けを求めた。
『こわくないから!ぼくのてをつかんでジャンプしろ、のぞみ!』
あの時から僕の手はずいぶん大きくなったけど
のぞみを守るための手であることに
変わりはない。
「永遠に隣にいられるかな…」
握る手に力をこめて、僕は思わずつぶやいた。
「ん…?なに?」
「なんでもない。…のぞみ…」
「ん…っ」
僕は体をねじって、のぞみの唇に僕のそれを
重ねた。
何度目かのキスは、沈んでゆく夕日が
まぶしかった。
こんなにも幸せなキスをしているのに、
永遠にそばにいられるかと聞かれても
答えられないのが、悲しかった。
唇から頬に、目に、耳に、髪に。
のぞみの全部に口づけたかった。
僕のものだとしるしをつけたかったが、
そのすべを僕は知らなかった。
だけど、のぞみの首にかかる髪をそっとよけて
白くてほっそりしたそこに口づけると、
のぞみは僕が今までに聞いたこともないほど
頼りなく、小さな叫び声をあげた。
僕は、のぞみもこうすることが
嫌いじゃないんだということを知った。
それから、次はここと誘導するかのように
喉を上げ、僕は蜜に誘われた蝶のごとく
吸い寄せられた。
ポケットの中で僕の手を握るのぞみの手に
力が入った。
こんな気持ちがあったんだ。
好きだとか、大切にしたいとか、
そんな気持ちの向こうに。
もっと触れていたい、もっと感じたい、
もっと重なりたい…
「りゅうせ…」
僕の名前を呼ぼうとしたのぞみの唇を、
再び僕はふさいだ。
もっと感じたい、もっと重なりたい…
深く、長いキスを僕らは止めることが
できなかった。
