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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

二学期の期末試験が終わっても、
僕らが通う高校には学力テストと言われる、
来年のクラス分けをするためのテストが
あった。
そのために、ここ何日間か僕とのぞみは
図書館に通って勉強をしていた。

「流星、今日バイト?」

相変わらずバイトは続けていて、
塾の冬期講習を申し込むつもりだ。

「学力テスト終わるまで、バイトは入れてないよ」
「やった」
「なんで?」
「だって、図書館で勉強でも何でも、流星と一緒にいられるから」

授業が終わって、理数科まで僕を迎えにきた
のぞみと並んで階段を降りていると、
同じクラスの男どもが後ろから来た。

「ちはー。小野塚がお世話になってまーす」
「流星くん、クールに見えるけどスケベだからねー」
「おまえら!何言ってんだよ!」
「今日も図書館デートって嬉しそうに言ってたじゃん。じゃーなー!」

のぞみが僕の顔を見てニヤニヤしている。

「流星、そんなこと言ってるんだ?」
「いや…嬉しそうにとか、そんなんじゃないから…うん」
「まあいいや。早く図書館行こ。席なくなっちゃう」

のぞみが早足で階段をかけ降りた。
その後ろ姿を追って、僕も一段飛ばしで
階段を降りた。

放課後の図書館は、ほどほどに混んでいたが
静かだった。
僕らは壁に面した自習スペースに横並びで
座り、それぞれ勉強を始めた。
旧制中学の流れを汲むこの高校の図書館は、
築100年を越え、高い天井近くまでの
開架式書庫に何万冊の本が収められているのか
とにかく圧巻である。
その図書館の冷たく湿った空気感が
僕は好きなのだ。
高校に入って部活に参加しなかった僕は、
バイトのない放課後よくここで時間を
潰している。
ちらっと隣ののぞみを見ると、
もう化学の問題集を開いて取りかかっていた。
僕は何となく、小さな窓から見えた青空に
気を取られていた。

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