
20年 あなたと歩いた時間
第2章 16歳
「かなめー、帰ろうぜ」
放課後、廊下の掃き掃除をしていると
聞き慣れた声がした。振り返ると、
教室をのぞきこんで要を探す流星がいた。
「要なら理科準備室だよ」
「掃除当番?」
「うん」
夏期講習が終わって塾通いのなくなった流星は
週末のバイト以外は要と遊んでいる、と
真緒から聞いた。
流星が紺野さんと付き合うと決めてから
一ヶ月がたつ。その間何となく自分から
話しかけづらく、学校内で会えば挨拶程度の
関係が続いていた。
要が戻ってくるまで待つつもりなのか、
流星は廊下の窓から外を眺めている。
少し、髪が伸びた。
それに見たことのない靴を履いている。
ゴミを集めながら、視界の端に入る流星を
意識していると、
流星は普段と変わらないのに、
流星を避けている自分が恥ずかしくなった。
「真島さーん、廊下終わったー?」
「うん、もう終わるよ。日誌書いとくから」
「ありがとう!じゃあね、お先」
もうひとりの当番の子が、鞄を持って
教室を出た。
片付けをしようと教室に入ると流星は
私を呼び止めて、一緒に中に入ってきた。
「なんで、避けてんの?」
誰もいない教室は、強い西日が射して
まぶしい。
その光を背中に受けた流星の姿が、
いつもより大きく見えた。違う。
威圧感。そんな感じ。
「避けてないよ」
私は、そう言いながらも流星の顔を
見られなかった。
自然と距離をとろうとしている自分がいる。
「なんか、意外」
「何が?」
「のぞみがそういう態度をとることが」
「『そういう』ってどういう?」
「避けたり、顔見なかったり」
「だって」
「別にいいよ。のぞみがしたいなら」
「彼女がいる人に、なれなれしい態度はとれないでしょ。いくら幼なじみでも…」
ガタンッ
その瞬間、流星は近くにあった机を
蹴飛ばして教室から出て行った。
中に入っていたものが転がり出て
散らばった。
驚いた。
怒ってる。本気で。
ショックで立ちすくむ自分を
どうすることもできなかった。
「…のぞみ。大丈夫か?」
理科準備室の掃除から戻ってきた要が、
心配そうに私を見ていた。
「ごめん、聞いてた」
「いいよ…」
要は黙って、倒れた机を元に戻し、
散乱した辞書やペンを拾い集めてくれた。
放課後、廊下の掃き掃除をしていると
聞き慣れた声がした。振り返ると、
教室をのぞきこんで要を探す流星がいた。
「要なら理科準備室だよ」
「掃除当番?」
「うん」
夏期講習が終わって塾通いのなくなった流星は
週末のバイト以外は要と遊んでいる、と
真緒から聞いた。
流星が紺野さんと付き合うと決めてから
一ヶ月がたつ。その間何となく自分から
話しかけづらく、学校内で会えば挨拶程度の
関係が続いていた。
要が戻ってくるまで待つつもりなのか、
流星は廊下の窓から外を眺めている。
少し、髪が伸びた。
それに見たことのない靴を履いている。
ゴミを集めながら、視界の端に入る流星を
意識していると、
流星は普段と変わらないのに、
流星を避けている自分が恥ずかしくなった。
「真島さーん、廊下終わったー?」
「うん、もう終わるよ。日誌書いとくから」
「ありがとう!じゃあね、お先」
もうひとりの当番の子が、鞄を持って
教室を出た。
片付けをしようと教室に入ると流星は
私を呼び止めて、一緒に中に入ってきた。
「なんで、避けてんの?」
誰もいない教室は、強い西日が射して
まぶしい。
その光を背中に受けた流星の姿が、
いつもより大きく見えた。違う。
威圧感。そんな感じ。
「避けてないよ」
私は、そう言いながらも流星の顔を
見られなかった。
自然と距離をとろうとしている自分がいる。
「なんか、意外」
「何が?」
「のぞみがそういう態度をとることが」
「『そういう』ってどういう?」
「避けたり、顔見なかったり」
「だって」
「別にいいよ。のぞみがしたいなら」
「彼女がいる人に、なれなれしい態度はとれないでしょ。いくら幼なじみでも…」
ガタンッ
その瞬間、流星は近くにあった机を
蹴飛ばして教室から出て行った。
中に入っていたものが転がり出て
散らばった。
驚いた。
怒ってる。本気で。
ショックで立ちすくむ自分を
どうすることもできなかった。
「…のぞみ。大丈夫か?」
理科準備室の掃除から戻ってきた要が、
心配そうに私を見ていた。
「ごめん、聞いてた」
「いいよ…」
要は黙って、倒れた机を元に戻し、
散乱した辞書やペンを拾い集めてくれた。
