
20年 あなたと歩いた時間
第2章 16歳
いつもの公園は、夏の間に伸びた雑草が
きれいに刈り取られ、少しだけ
広くなったように思えた。
入口に流星の自転車があった。
鞄をかごにつっこんだまま、姿はない。
遠くまで目を凝らしてみると、
奥のグラウンドで小学生と流星が見えた。
バックネットの外側から見つからないように
近づくと、話し声が聞こえた。
「手加減しないけど、いいか?」
「いいよ。本気出してよ」
小学生くらいの男の子数人に囲まれて、
流星は地面に引かれたスタートラインに
手をついた。
そのとなりに一番早そうな男の子が並んだ。
「ハンデいるなら今のうちだぞ」
「いらない」
「よし、じゃあやろう」
ぱん、と別の男の子が手をたたいて
二人はスタートした。
流星は小学生相手に本気で全力疾走する。
制服のシャツの背中が、
風をはらんで大きくふくらんだ。
両腕を前に強く振り、
まわりの景色が飛んだ。
自分にからみついたいやなことを全部、
振り払うかのように。
当然、大差をつけて流星が先にゴールした。
男の子がゴールするやいなや、
二人は向きを変え、再びこちらに向かって
走り始めた。
スタートラインに戻り、
ハイタッチした流星と男の子は
並んで地面に寝転んで、空を見上げた。
「…お兄ちゃん、すごい早いね」
男の子は、流星のほうに顔を向けて言った。
「中学のとき、県大会で一位になったんだ」
「へえ。いっぱい練習した?」
「したした。けど、その県大会は好きな女の子が見に来てたから、一位とれたんだ」
「ぼくも好きな子、いるよ」
「そっか。頑張れよ」
「また一緒に走ってくれる?」
「もちろん」
きれいに刈り取られ、少しだけ
広くなったように思えた。
入口に流星の自転車があった。
鞄をかごにつっこんだまま、姿はない。
遠くまで目を凝らしてみると、
奥のグラウンドで小学生と流星が見えた。
バックネットの外側から見つからないように
近づくと、話し声が聞こえた。
「手加減しないけど、いいか?」
「いいよ。本気出してよ」
小学生くらいの男の子数人に囲まれて、
流星は地面に引かれたスタートラインに
手をついた。
そのとなりに一番早そうな男の子が並んだ。
「ハンデいるなら今のうちだぞ」
「いらない」
「よし、じゃあやろう」
ぱん、と別の男の子が手をたたいて
二人はスタートした。
流星は小学生相手に本気で全力疾走する。
制服のシャツの背中が、
風をはらんで大きくふくらんだ。
両腕を前に強く振り、
まわりの景色が飛んだ。
自分にからみついたいやなことを全部、
振り払うかのように。
当然、大差をつけて流星が先にゴールした。
男の子がゴールするやいなや、
二人は向きを変え、再びこちらに向かって
走り始めた。
スタートラインに戻り、
ハイタッチした流星と男の子は
並んで地面に寝転んで、空を見上げた。
「…お兄ちゃん、すごい早いね」
男の子は、流星のほうに顔を向けて言った。
「中学のとき、県大会で一位になったんだ」
「へえ。いっぱい練習した?」
「したした。けど、その県大会は好きな女の子が見に来てたから、一位とれたんだ」
「ぼくも好きな子、いるよ」
「そっか。頑張れよ」
「また一緒に走ってくれる?」
「もちろん」
