
20年 あなたと歩いた時間
第1章 14歳
中学二年生の夏休みは、
ふわふわして落ち着きがなくて、
居場所を求めてさまよう、
そんな感じだった。
毎日何となく家事をし、
図書館に行ったりテレビを観たりしていると
すぐに一日は終わった。
私以外の三人は何かと忙しく、
それでも宿題をするために
誰かの家に集まる週末が、
私には今日がいつなのかという
目安になっていた。
流星は陸上部の練習、
要は幼稚園を経営する両親の手伝い、
真緒は塾通いをしていた。
「ねぇ、要。これ間違えてるよ。助動詞のあとは原形じゃん」
「あ、そっか。じゃあここもだ」
真緒が要のノートをのぞいて
間違いを知らせる。
集まって宿題をする、というより
成績のいい真緒と流星が、
要と私に勉強を教える感じになっている。
「のぞみはさ、先にこの不規則動詞を覚えたほうがよくない?」
流星が教科書の巻末にある表を
引っ張り出して私のほうに向けた。
ずらりと並んだ動詞の活用に
目がくらみそうになる。
「見たことないなんて言うなよ。ちゃんと授業中起きてんだろな?」
「も、もちろん。聞いてる。大丈夫」
流星は鋭い。
ちゃんとみんなのことを見ている。
誰かに異変があったら
真っ先に気付くのはいつも流星だ。
そのとき、テーブルの上のグラスを
流星が移動させた。
「こぼれそうだったから」
「ありがと」
ほら、また。
だから陸上部では三年生が引退したあと、
絶対にキャプテンを任されるだろうと
誰もが思っている。
今までだって何度もクラス委員を
務めてきた。
そんな流星の、端正な横顔を
じっと見つめてしまう。
毎日の部活ですっかり日焼けした。
最近少し痩せたかも知れない。
「ん?」
気づいた流星がふと顔をあげた。
「…何もない」
ふわふわして落ち着きがなくて、
居場所を求めてさまよう、
そんな感じだった。
毎日何となく家事をし、
図書館に行ったりテレビを観たりしていると
すぐに一日は終わった。
私以外の三人は何かと忙しく、
それでも宿題をするために
誰かの家に集まる週末が、
私には今日がいつなのかという
目安になっていた。
流星は陸上部の練習、
要は幼稚園を経営する両親の手伝い、
真緒は塾通いをしていた。
「ねぇ、要。これ間違えてるよ。助動詞のあとは原形じゃん」
「あ、そっか。じゃあここもだ」
真緒が要のノートをのぞいて
間違いを知らせる。
集まって宿題をする、というより
成績のいい真緒と流星が、
要と私に勉強を教える感じになっている。
「のぞみはさ、先にこの不規則動詞を覚えたほうがよくない?」
流星が教科書の巻末にある表を
引っ張り出して私のほうに向けた。
ずらりと並んだ動詞の活用に
目がくらみそうになる。
「見たことないなんて言うなよ。ちゃんと授業中起きてんだろな?」
「も、もちろん。聞いてる。大丈夫」
流星は鋭い。
ちゃんとみんなのことを見ている。
誰かに異変があったら
真っ先に気付くのはいつも流星だ。
そのとき、テーブルの上のグラスを
流星が移動させた。
「こぼれそうだったから」
「ありがと」
ほら、また。
だから陸上部では三年生が引退したあと、
絶対にキャプテンを任されるだろうと
誰もが思っている。
今までだって何度もクラス委員を
務めてきた。
そんな流星の、端正な横顔を
じっと見つめてしまう。
毎日の部活ですっかり日焼けした。
最近少し痩せたかも知れない。
「ん?」
気づいた流星がふと顔をあげた。
「…何もない」
