
20年 あなたと歩いた時間
第2章 16歳
「おはよ、のぞみ」
「あ、真緒。おはよう」
「寒いね…」
真緒はボーダーのマフラーにあごをうずめて
小さくさむっ、と言う。
バス停には他の高校の生徒も何人か並び、
もうすぐ始まる期末試験のために
単語帳や問題集をめくっている。
十二月。
自転車通学をしていた私達も、寒さに負けて
ついにバスで通うことにした。
空は曇天で北風が吹き、体感温度が下がる。
「ねえ、のぞみ」
「ん?」
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
「うん」
「流星とのぞみって…」
真緒は、私の耳元に顔を寄せて言った。
「え、ううん。まだ…っていうか、考えたこともなかった」
そう答え、私は思わず体が熱くなるのを
感じた。
「…そうよね…」
「もしかして、要が…?」
「うん…」
要と真緒は、夏休み以来二人でいることが
多くなった。流星から聞いたところによると
あの花火大会の日、
要は「ゴールを決めた」らしい。
そういう表現がいかにも要らしいけれど、
とにかく二人はお互いの思いが
通じたということだ。
そうなると、十六歳の男子が次に考えることは
そう多くはない。
「流星だって絶対考えてるって」
「うそ…」
「考えてるよ!流星は頭いいからめっちゃ作戦立ててそう。要なんか行き当たりばったり、本能のままに、って感じだけどね」
「確かに!」
バス停で笑う私達を、
前に並んでいたサラリーマンが怪訝な顔をして
振り返る。そんなことは気にならないほど、私達はお互いの恋に夢中だった。
子どもの頃からずっと一緒にいた流星や要がそんな存在になるなんて、
思ってもみなかった。
温かくて、やわらかくて、心地よい存在が
私にも真緒にもいることが、
何よりもしあわせだった。
「おっ先ぃー!」
その二人が、バスに乗ろうとした私達の後ろを
自転車で走り抜けていく。
「今日一緒に帰ろう。乗せてやるよ」
「うん!」
「じゃあな、後で」
流星が私の大好きな笑顔で言った。
隣で真緒がニヤニヤしている。
「流星、髪型変わった?」
「髪、伸びたからじゃない?最近よく立たせてるよ。中学の時はずっと短かかったからじゃない?」
「色気づいてる」
「え?」
「気をつけないと、他の子が狙ってるかもよ」
「何それ!あはは」
私たちは笑いながら、空席のないバスに乗り込むと、信号待ちしている流星と要が窓の外に見えた。
「あ、真緒。おはよう」
「寒いね…」
真緒はボーダーのマフラーにあごをうずめて
小さくさむっ、と言う。
バス停には他の高校の生徒も何人か並び、
もうすぐ始まる期末試験のために
単語帳や問題集をめくっている。
十二月。
自転車通学をしていた私達も、寒さに負けて
ついにバスで通うことにした。
空は曇天で北風が吹き、体感温度が下がる。
「ねえ、のぞみ」
「ん?」
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
「うん」
「流星とのぞみって…」
真緒は、私の耳元に顔を寄せて言った。
「え、ううん。まだ…っていうか、考えたこともなかった」
そう答え、私は思わず体が熱くなるのを
感じた。
「…そうよね…」
「もしかして、要が…?」
「うん…」
要と真緒は、夏休み以来二人でいることが
多くなった。流星から聞いたところによると
あの花火大会の日、
要は「ゴールを決めた」らしい。
そういう表現がいかにも要らしいけれど、
とにかく二人はお互いの思いが
通じたということだ。
そうなると、十六歳の男子が次に考えることは
そう多くはない。
「流星だって絶対考えてるって」
「うそ…」
「考えてるよ!流星は頭いいからめっちゃ作戦立ててそう。要なんか行き当たりばったり、本能のままに、って感じだけどね」
「確かに!」
バス停で笑う私達を、
前に並んでいたサラリーマンが怪訝な顔をして
振り返る。そんなことは気にならないほど、私達はお互いの恋に夢中だった。
子どもの頃からずっと一緒にいた流星や要がそんな存在になるなんて、
思ってもみなかった。
温かくて、やわらかくて、心地よい存在が
私にも真緒にもいることが、
何よりもしあわせだった。
「おっ先ぃー!」
その二人が、バスに乗ろうとした私達の後ろを
自転車で走り抜けていく。
「今日一緒に帰ろう。乗せてやるよ」
「うん!」
「じゃあな、後で」
流星が私の大好きな笑顔で言った。
隣で真緒がニヤニヤしている。
「流星、髪型変わった?」
「髪、伸びたからじゃない?最近よく立たせてるよ。中学の時はずっと短かかったからじゃない?」
「色気づいてる」
「え?」
「気をつけないと、他の子が狙ってるかもよ」
「何それ!あはは」
私たちは笑いながら、空席のないバスに乗り込むと、信号待ちしている流星と要が窓の外に見えた。
