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20年 あなたと歩いた時間

第2章 16歳

そこに、後ろから同じように
自転車通学している紺野さんが来た。
さらさらの長い髪を下ろして、
とても同級生とは思えない大人っぽさが
ある。成績もスタイルも良くて、
おまけに美人だなんて、
流星が一瞬でも付き合うと言った気持ちが
わかる気がする。

「ほら、噂をすれば」

紺野さんが笑いながら、
流星の髪をさわった。結構かわいい笑顔を、
流星に向けて。

「降ります!」

その時、考えるよりも先に体が動いた。

「ちょっ、のぞみ!」

私はバスを飛び降りて、信号待ちしている
流星のもとに走った。久しぶりに全速力で
走ったせいか、肩で息をしているのがわかる。

「…流星に…触んないで」
「え?」
「流星に触るなって言ってんの」

紺野さんのかわいい笑顔がゆがんだ。

「私の彼氏だから。触んないで。行こ、流星」

私は流星の自転車の後ろに乗って、はやく、と流星を促した。こんなことするなんて。
自分でも驚いた。理由なんてわからない。

「のぞみ、どうした?」

流星は心底わからない、といった顔をして
自転車にまたがったまま後ろを振り返る。

「わかんない。嫌だったの。紺野さんが流星に笑いかけて髪に触ったから」
「それだけ?」
「それだけ」

ふっ、と笑うと流星は自転車のスピードを
あげた。あっという間に学校に着くと
自転車置き場を抜けて、
プールと体育用具室の間に私を
連れていった。

「のぞみ…」
「…りゅ…」
「おまえ、かわいすぎ…」


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