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20年 あなたと歩いた時間

第4章 18歳

「あれ、帰り道にコンビニなかったな。まあいいか。…のぞみ?」

気がつくと見慣れた流星の家の前だった。
考えすぎて、テンションが下がった私を
不思議そうに流星が見ていた。

「着いたぞ。入れよ」
「うん…」
「飲み物とってくるから、先上がってて」

そう言われて靴を脱ぎ、流星の部屋がある
二階に上がった。
相変わらずさっぱりしすぎの流星の部屋だ。
勉強机には昨日していたと思われる問題集や
暗記に使った紙がそのままになっていた。
ベッドの上はきれいに片付けられているけれど
枕元には単語帳がいくつか置いてあった。
寝る前まで勉強している流星が想像できた。
ベッドの横にぺたんと座って枕を抱くと、
流星の匂いがした。
来年の今頃、流星はここにいないかも
しれない。

「…何してんの?」
「流星の匂いがする」

持ってきたジュースをテーブルに置くと、
流星は笑いながら、変態、と言った。
そして、流星は腕時計を外した。
その瞬間、私は自分が無意識に身構えたのが
わかった。

「…何もしねーって」

となりに座った流星は横から私を
枕ごと抱きしめた。
警戒心が、安心感で満たされていく。

「このほうが、おれの匂いするだろ?」
「…する。いい匂い」

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