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20年 あなたと歩いた時間

第4章 18歳

私は目を閉じて、流星の温もりの中にいた。
制服のシャツの上から腕をたどって、
ごつごつした肩に到着すると、
流星の首に自分の腕を回して
流星に向き合った。
目を開けると、あごのラインが見えた。
そこにちゅっ、とキスをすると
流星の喉が上下するのを感じた。

「やばい、おれ。我慢できない」
「え…?」
「ごめん、今日は帰れ」
「…う、うん」

久しぶりの二人の時間なのに、
予想外なことを言われて悲しくなった。

「ほんと、ごめん。のぞみにはわかんないかも知れないけど…おれら、まだ高校生だし、受験生だし」
「うん」
「ていうか、おれ、健康な高校三年生の男子だから…あ、なんか訳わかんねーな」
「ふふ。わかった。今日は帰る。また明日ね」

いつも冷静沈着を絵に描いたような流星が、
慌てているのがおかしくて、
私は思わず笑う。わかってる。
流星が私を、
うんと大切に思ってくれていること。

「ありがとう。私、すごい大事にされてる」
「当たり前だろ。…おれの、のぞみなんだから」

少し照れたように、流星はグラスのジュースを
一気に飲み干した。

「じゃあね。あんまり遅くまで勉強頑張らないで」
「じゃあな」

外に出るとぬるい風が吹いて、
春の終わりを告げていた。

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