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20年 あなたと歩いた時間

第4章 18歳

「だろ?!松井くん!やっぱそうだよな。でもさ、流星が神である所以はそういうことじゃないんだ」

要があまりにも熱く語るので、
松井の眉毛が一瞬ぴくりと動いた。

「理性の『神』だ」
「要、それ以上言ったら…」

おれは要の足を踏みにじりながら言った。

「それは興味あるな」

ところが松井は、身を乗り出して
要の方を向いた。

「彼女と部屋に二人きりで、あんなことまでしたのに自分の欲望を抑えて彼女を帰したんだ、こいつ」
「…すげえ」

松井は要の言葉に息をのんだ。
いや、違うだろ。
松井、完全に何か想像してるだろ。

「だろ?!同じ男として尊敬するよな、崇めるよな?」
「松井、要のことこれ以上相手すんな」

おれが言うと、松井は我に帰って
自分のイーゼルに向き直り、
何か考えてから、けど、とつぶやいた。

「それって、据え膳食わなかったってことだろ?神どころか、彼女に失礼じゃないのか?」
「ま、松井くん…そっちかよ」
「この時期にそういう面倒なことに自ら飛び込んでいかない小野塚はえらいと思うけど、男としてはどうだろうな」
「だよな、松井くん」
「うるさい、要。どっちでもいいよ。おれはそういうことが目的でのぞみと付き合ってるんじゃないから」

あの時は、我ながらよく耐えたと思う。
あのまま一線を越えていても、
誰にも文句は言われなかっただろう。
いや、だからあれは。別の欲求が!
本当にそんなんじゃない。
今はまだ、違うんだ。

「流星、おまえほんっとクールだな。ガキの頃からずっとだよな」
「おまえがチャラチャラしすぎなんだよ」
「クールガイは二人もいらないだろ。その役はおまえに譲ったんだよ」

要が初めてそんなことを言った。

「おれ、真緒の前ではこんなんじゃないからな」
「…へえ、そうなんだ」
「そうだよ」

その時、やっと授業が終わるチャイムが
鳴った。

「じゃあな、おれのShooting star」
「言っとけよ!じゃあな」

これがおれの十四年来の親友、要。
まあまあ面白いから、
ずっと一緒にいるんだろうな。
ていうか、なんだよShooting starって。
やめてくれ。

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