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20年 あなたと歩いた時間

第4章 18歳


満月が、見事にくっきり見えた。
私は思わず電話の子機を手にとり、
流星の家の番号を押した。

『はい、小野塚です』
「流星?私、のぞみ。そと見て。満月」
『ん?ちょっと待って…』

流星が、カーテンを開ける音がした。

「まん丸だよ」
『あ…ほんとだ』
「ね、きれいだね。なんかうれしくなって、流星に電話しちゃった」
『…勉強してた?』
「うん。でも、今日は何となく集中できない」
『おれも…。音楽聴いてた』

少し眠そうな、かすれた声で流星が
いつもよりゆっくり話す。

「KAN?」
『そう』
「ねえ流星」
『ん…?』
「好きだよ。流星のこと」

何となく、言わずにはいられなかった。

『うん…わかってる。おれも同じだから』
「疲れたら、休憩していいんだよ」
『ん…適当にな。けど今は休むわけにはいかない』
「流星…ありがとう」

何に対してなのか、
自分でもわからなかった。
ただ、
どうしても言わなければならない気がした。
優しくしてくれてありがとう。
私を好きになってくれてありがとう。
同じ時代に、存在してくれてありがとう。
未来を考えてくれて、ありがとう。
生まれてきてくれて、ありがとう。

『変なこと言うなよ』
「そう?」
『もう寝るよ』
「うん。おやすみ」
『おやすみ』

いま、流星がいること。
それが一番うれしい。
流星。私、もっと強くなりたい。
あの頃から、今もずっと思ってるの。

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