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20年 あなたと歩いた時間

第4章 18歳

真緒が言った通り、高校三年の夏休みは
ないも同然だった。
流星に会えたのも片手で足りるほどだった。
相変わらず電話はくれたけれど、
そんなんじゃ全然足りなかった。
それが原因でけんかもした。
二学期が始まって一週間が過ぎた。
昼休みに、借りた本を返そうと
図書館に向かっているときだった。

「真島!決まったぞ、おまえに」

生徒から川辺っち、と呼ばれている
進路指導の川辺先生が私を呼び止めた。

「えー!本当ですか?」

夏休み前に出していた大学の推薦に、
私が選ばれたのだ。

「けど、本当にいいのか?五年間は付属病院で働かなくちゃいけないし、どこに勤務するかもわからないぞ」
「大丈夫です!」
「…小野塚か?」
「え?」
「小野塚の、医学部志望に触発されたか?」

川辺っちはさわやかに笑いながら言った。

「そういうんじゃないけど…私、亡くなった母が看護師だったんです。それで、医療従事者には憧れがあったんです」
「そうか。お母さん、亡くなってるのか。大変だったな」
「そんなふうに思ったこと、ないんです。なぜか」
「うん。じゃあ、願書出しとくからな。まだまだ気を抜くなよ」

やった!

私は真っ先に流星に知らせたくて、
理数科棟に走った。

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