
20年 あなたと歩いた時間
第4章 18歳
めったに来ることのない理数科棟は、
圧倒的に男子が多くて少し苦手だ。
早足でA組に向かうと、
廊下で紺野さんと目があった。
「真島さん?」
「あ、紺野さん…」
要が言うところの、
流星に触らないで事件以来初めて
紺野さんに会った。相変わらずかわいくて、
スタイルもいい。夏服のスカート、
短くないデスカ?
「小野塚くん、探してるの?」
「うん…いる?」
「さあ…さっきまで私と話してたけど、どこかな」
なんか勘にさわる言い方するな、この子。
流星のこと好きだから私のこと、
良く思ってなさそうなのは確かだけど。
「真島さん、小野塚くんってなんで陸上やめたの?でもまた走ったりしてるよね」
「なんでって…」
「知らないの?彼女なのに」
「…中学の時、色々あったから」
紺野さんが、薄く笑った。
「私も京都の大学受けようかな」
そう言って短いスカートの裾をひらりとさせ
教室に入っていった。
あーいやだいやだ。
私と流星の大学生活まで邪魔する気?!
「お、のぞみ。どうした?」
その時後ろから流星の声がした。
「あ、流星!私ね、私、推薦の校内選考受かったよ!」
「まじ?!で、どこ?」
「京都医大の看護学部」
「看護学部…京都医大…?」
「知らなかったでしょ」
「うん。ていうか、教えてくれなかっただろ」
「言わなかったもん」
「はは。何でだよー!けど良かったじゃん!まじかよ!やばい!おれ、めっちゃ頑張らないとだめじゃん!」
流星は、っしゃー!やるぞー!と言いながら
教室に入っていった。
見上げると、うろこ雲が
空の高い場所にあった。
