
20年 あなたと歩いた時間
第4章 18歳
校内選考に受かったからと言って、
気は抜けない。
卒業できなければ意味がないし、
まわりは来年の三月まで
ピリピリしているのだから、
無神経には喜べない。
流星の試験も年明けからが勝負だし、
それまでの道のりは長い。
久しぶりに早く帰ってきたお父さんと、
真島家特製トマトカレーを食べながら、
大学のことを話した。
「お父さん、私、推薦で大学決まりそう」
「え、もう決まるのか?早いな」
お父さんは、湯気で曇った眼鏡を
外して言った。
「京都なんだけど、いい?」
「一人暮らしするのか?」
お父さんは前々から私が行きたいところに
行けばいいと言ってくれていた。
自分のことだけ考えて、頑張りなさいと。
「京都医大のね、看護学部なの」
「看護学部か。やっぱりその道を選んだんだな」
やっぱり、と仏壇の方を向いて
お父さんは言った。
私のお母さんは、看護師だった。
でもお母さんに憧れたわけじゃない。
お母さんが病気になって入院していた時に
お世話になった看護師さんが、
私にはとても素敵に見えたのだ。
多分。
あの時担当してくれた先生が、
流星が医学部を目指すきっかけになったと
私は思っている。
流星とはよく一緒にお見舞いに行った。
その度に流星は、先生にくっついて歩いては
色んなことを質問していた。
最後まで、お母さんの命を
全力でつなごうとしてくれた人達。
私と流星は、そんな彼らに無意識に
尊敬と憧れを抱いていた。
「…流星くんは、元気か」
「なんで、いきなり?元気だよ」
「好きなんだろう?流星くんが」
「…うん」
「頑張りなさい。勉強も恋愛も今しかできないんだ」
「…ありがとう」
ねえ、流星。
あなたとの恋愛は、本当にこの時しか
できなかった。
だから私は本気で恋をしたの。
本当に、本当に流星のことが
好きだったから。
でも、今も恋をしている。
流星に。
気は抜けない。
卒業できなければ意味がないし、
まわりは来年の三月まで
ピリピリしているのだから、
無神経には喜べない。
流星の試験も年明けからが勝負だし、
それまでの道のりは長い。
久しぶりに早く帰ってきたお父さんと、
真島家特製トマトカレーを食べながら、
大学のことを話した。
「お父さん、私、推薦で大学決まりそう」
「え、もう決まるのか?早いな」
お父さんは、湯気で曇った眼鏡を
外して言った。
「京都なんだけど、いい?」
「一人暮らしするのか?」
お父さんは前々から私が行きたいところに
行けばいいと言ってくれていた。
自分のことだけ考えて、頑張りなさいと。
「京都医大のね、看護学部なの」
「看護学部か。やっぱりその道を選んだんだな」
やっぱり、と仏壇の方を向いて
お父さんは言った。
私のお母さんは、看護師だった。
でもお母さんに憧れたわけじゃない。
お母さんが病気になって入院していた時に
お世話になった看護師さんが、
私にはとても素敵に見えたのだ。
多分。
あの時担当してくれた先生が、
流星が医学部を目指すきっかけになったと
私は思っている。
流星とはよく一緒にお見舞いに行った。
その度に流星は、先生にくっついて歩いては
色んなことを質問していた。
最後まで、お母さんの命を
全力でつなごうとしてくれた人達。
私と流星は、そんな彼らに無意識に
尊敬と憧れを抱いていた。
「…流星くんは、元気か」
「なんで、いきなり?元気だよ」
「好きなんだろう?流星くんが」
「…うん」
「頑張りなさい。勉強も恋愛も今しかできないんだ」
「…ありがとう」
ねえ、流星。
あなたとの恋愛は、本当にこの時しか
できなかった。
だから私は本気で恋をしたの。
本当に、本当に流星のことが
好きだったから。
でも、今も恋をしている。
流星に。
