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20年 あなたと歩いた時間

第4章 18歳

二月。
まだまだ春というには程遠い季節に、
私たちは全員無事高校を卒業した。
国公立を受験する生徒が多いためか、
他校より早めの卒業式は、
正直通過点という感じで、
別れを惜しむのもそこそこに、
皆それぞれの道を目指した。
とうとう流星の大学入試合格発表の日が
やってきた。
流星以外は三人とも進路が決まっていたので
電車に乗ってみんなで見に行くことにした。

「おまえら、ほんと他人事だよな。おれさ、番号なかったら浪人なんだからな。しかも、郵便で合否通知来るのになんでわざわざ…」

流星は不機嫌極まりない。
昨日だってギリギリまで行く行かないで
もめていた。
でも自己採点で十分合格ラインに
達していたのだ。
誰も不合格は予想していない。

「まーまーまー。おれら全員、あのいかにも合格発表ーってやつを体験したいだけだし。国立受けたのは、流星だけだし!」
「京都も行ってみたいし!私、抹茶パフェ食べるんだー」

真緒と要はホームではしゃぎっぱなしだ。
だけどこの二人は、あと数週間で
離ればなれになってしまう。
要は東京、真緒は地元の女子大に決まった。

「流星。ごめんね。私が言い出したばっかりに…」
「…のぞみかよ、言い出しっぺは!」

こいつこいつと言いながら、
流星は私のほっぺたを軽く引っ張って、
半ば本気で怒った。

「いたたたた!ごめんってば!」

でも全然痛くなんてなかった。
四月からまた、流星と一緒の大学に通える。
最初から私には、流星と離れる選択肢など
なかった。
流星が京都の医学部を目標にしていると
知った日から、私は同じ大学に行くことしか
考えなかった。

「あ、電車来たよ!」

そんな感じで、私たち四人は京都に
グループデートにでも行く気持ちで
流星の合格発表を見に行った。
文字通り、「合格」発表を、見に。

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