
20年 あなたと歩いた時間
第1章 14歳
お父さんが会社に出かけて、
朝食の後片付けや掃除を済ませると
することがなくなった。
あまりにも暇すぎて、
何となく自転車に乗って家を出た。
夏休みの平日は、まぶしい。
遮断機が降り、
二両だけの電車が通りすぎると
他にはもう音がなくなった。
道路には学校に向かう学生の姿はなく、
収集を待つゴミが小さな山を作っている。
どこかの家から、赤ちゃんの泣く声が
聞こえる。
踏切を越えて左に曲がると
流星の家が見えてきた。
玄関の引き戸が少し開いて、
誰かが出てくるようだった。
スピードを落として
通りすぎようとしたとき、
ちょうど流星が出てきた。
陸上部のシャツを着ている。
練習用ではなくて、
ちゃんと学校名がローマ字で書いてあるもの。
「おう、のぞみ。どっか行くの?」
背中に大きなバッグをかついで、
玄関先に置いてあるいつもの
流星の自転車にまたがると、
流星はここから始まる上り坂に向かって
こぎだした。あわてて私もついていく。
この坂を越えた先に私達が通う中学校が
ある。
「どこってないんだけど…何となく自転車に乗っただけ。流星は?試合?」
「うん。秋の大会の予選。なんかいいタイム出せそう」
流星は心なしか気合いの入った声で言った。
「今日は百ハードルと、高跳び。あー、おれ絶対負ける気がしない。今日はめちゃくちゃ走れそうなんだ。『一位、桜台二中、小野塚流星』」
流星はおどけて表彰のアナウンスを真似た。
「ふーん。なんでそんな自信あるの?」
「イメトレだよ、イメージトレーニング。勝つ自分を想像して気分を高めるんだよ」
「へえ。でもさ、流星ってほんと走るの好きだよね。ずっと思ってたんだけど、ねえ何で?」
私は何となく疑問に思っていたことを
聞いてみた。
「好きに、理由なんてある?」
朝食の後片付けや掃除を済ませると
することがなくなった。
あまりにも暇すぎて、
何となく自転車に乗って家を出た。
夏休みの平日は、まぶしい。
遮断機が降り、
二両だけの電車が通りすぎると
他にはもう音がなくなった。
道路には学校に向かう学生の姿はなく、
収集を待つゴミが小さな山を作っている。
どこかの家から、赤ちゃんの泣く声が
聞こえる。
踏切を越えて左に曲がると
流星の家が見えてきた。
玄関の引き戸が少し開いて、
誰かが出てくるようだった。
スピードを落として
通りすぎようとしたとき、
ちょうど流星が出てきた。
陸上部のシャツを着ている。
練習用ではなくて、
ちゃんと学校名がローマ字で書いてあるもの。
「おう、のぞみ。どっか行くの?」
背中に大きなバッグをかついで、
玄関先に置いてあるいつもの
流星の自転車にまたがると、
流星はここから始まる上り坂に向かって
こぎだした。あわてて私もついていく。
この坂を越えた先に私達が通う中学校が
ある。
「どこってないんだけど…何となく自転車に乗っただけ。流星は?試合?」
「うん。秋の大会の予選。なんかいいタイム出せそう」
流星は心なしか気合いの入った声で言った。
「今日は百ハードルと、高跳び。あー、おれ絶対負ける気がしない。今日はめちゃくちゃ走れそうなんだ。『一位、桜台二中、小野塚流星』」
流星はおどけて表彰のアナウンスを真似た。
「ふーん。なんでそんな自信あるの?」
「イメトレだよ、イメージトレーニング。勝つ自分を想像して気分を高めるんだよ」
「へえ。でもさ、流星ってほんと走るの好きだよね。ずっと思ってたんだけど、ねえ何で?」
私は何となく疑問に思っていたことを
聞いてみた。
「好きに、理由なんてある?」
