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20年 あなたと歩いた時間

第4章 18歳

「けどよかったー。これでやっと終わったね。いや、終わりじゃないんだけど…」
「のぞみ、何言ってんの。さっきからそればっか」

流星の受験番号はちゃんと、あった。
国立一本に絞りこんで、
ここしか受けなかった流星は本当にすごい。
番号を見つけたときは流星よりも
真緒や要や私が、まわりに引かれるほど
喜んだ。
それで予定通り抹茶パフェを食べて
帰ってきたのだ。そのまま流星の家で、
二人でささやかな合格パーティーを
することになった。

「医学部かあ。格好いいよ、流星。ヤバイ。彼氏が医学部とか、素敵すぎる」

自分でも浮かれすぎなのはわかっている。
でも、今日だけ!
私だって普通の十八歳の女子だもん。
二人揃って大学が決まって、
めでたい以外の何がある!

「…おもしれーのな、さっきから」

はしゃぐ私を見ながら、
口の端だけをあげて笑う流星は、
やっと受験勉強から解放されたというのに
びっくりするくらい普通だ。

「たぶん、私が帰ってからひとりで喜びをかみしめるタイプでしょ?あー、なんかいやらしいなー。流星ってそうだよね、絶対人前で喜んだりしないよね」

流星は勉強机の椅子に、
背もたれを前にしてくるくる回っている。
本当は、その行動だけでも
流星の喜びは伝わってくるのだけど、
私は敢えてそんなことを言ってみた。

「んなことないよ。のぞみが推薦の校内選考決まったとき、」

そこまで言って流星は椅子から降りた。
立ち上がり、私の背後に回り込むと、
ふいに後ろから抱きしめられた。

「自分のことみたいに、うれしかったけど…?」
「ちょ、ちょっと、流星?」

いきなり流星の熱い息を首筋に感じて、
私は心臓が止まりそうになった。

「大学受かったことよりも…」
「…よりも…?」

流星らしくなく、言い淀んで私から離れた。

「…食べる?抹茶チョコ」

なんだ、チョコか。
違うことを考えてしまった自分に
恥ずかしさを覚える私を無視して、
流星は京都で買ってきたチョコを開ける。
前に雑誌でみて、京都に行ったら
絶対に買おうと流星と言っていたものだ。

「う、うん。食べる」
「じゃあおれが剥いてやるよ。はい、口開けて」

なに、この感じ。なんかドキドキする。
流星がチョコをひとつ、私の目の前まで
持ってきたその瞬間、
流星はそれを自分の口に入れた。

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