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20年 あなたと歩いた時間

第5章 20歳

そんなふうに答えてくれた、十四歳の流星は
もういない。きっといま、同じ質問をしても
同じ答えはかえしてくれないだろう。
全力で走ったあと、よく地面に寝転んで
空を見上げていた。
ねえ、流星。
あの時と同じ空が、今でも見える?
私はごみ袋をゴミステーションに投げつけた。
大学の友達は、いつか見たドラマのような
学生生活を送っているように見えた。
彼氏とか彼女とか、
お泊まりだとかプレゼントだとか。
浮気したとかされたとか、
ケンカしたとか仲直りしたとか。
私たちはそんなこと、できるほど同じ時間を
過ごしていない。
一緒に住んでいることを羨ましがられたり
するけれど、そんなの全然違う。
それどころか、
流星はいつも疲れた顔をしていて、
それなのに私が心配する隙さえ
与えてくれない。
流星は、いつもひとりで歩いている。
優しい目をして振り返ってくれた、
昔に戻りたい。並んで自転車をこいだ坂道
暑かった夏休み。
一緒に宿題をして、アイスを食べて。
まだ、誰かを愛してるなんて
思ったことのなかったあの夏休み。

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