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20年 あなたと歩いた時間

第5章 20歳

流星はそれだけ言って、
さっさと行ってしまった。
相変わらず無表情で、
どうすればいいのかわからない。
とりあえず髪を乾かした。
セミロングの髪が乾くころ、
流星が出てきた。ドライヤーを置くと、
何か言いたげな流星がドアのところで
突っ立っている。

「…使う?ドライヤー」
「いや…そのうち乾くから」
「何か、飲む?」
「うん。…いや、やっぱいい」

何!?と心の中でツッコミを入れた。

「寝よっか。その…一緒に」

今まで見た流星の表情で、
一番照れた顔をしながら言った。
何、この展開!と再びツッコミを入れながら
私はきわめて普通に返事をした。
本当は飛び上がりそうなくらい嬉しかった。

「え、いいの?流星、勉強は?」
「昨日試験終わったし、今日はいい。それに…悪かったな。のぞみに八つ当たりして」

流星が素直に謝ってくれた。
いつも喧嘩のあとは、流星が折れてくれるが
今日は殊更嬉しかった。

「歯磨きしてくる!」
「おう。早く来いよ」

私達は普段別々の部屋で勉強し、
眠っていた。
それは、一緒に住むことになったときに
決めた。
もう、お互い感情に流されてしまうことも
ないほど、私達は将来の目標もビジョンも
しっかりしていた。
今しなければならないことは、
恋愛ではない。
でも、本当はもっと流星を感じて
いたかった。
もっと、甘えてみたかった。
もっと、一緒にいたかった。

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