
20年 あなたと歩いた時間
第5章 20歳
私の中に残る流星の跡が、少し痛かった。
鏡に映った肩や首筋には、強くつけられた
しるしが生々しく赤い。
「ごめん、なんかおれ、がっついてたよな」
「ううん。うれしかった。…流星の気が晴れるなら」
「え?そんな風にとられてたんだ?」
シャツを着た流星は、ベッドの端に座って
ミネラルウォーターを飲んでいた。
そのふたをキュッと閉めたかと思うと、
いきなり壁に投げつけた。
「りゅ、流星?!」
「…んだよ。気晴らしとか、ヤりたいだけとか思ってんの?おれ、そんなつもりないよ?のぞみは、そんなんで抱かれて平気なのか?」
「…平気。全然平気。どんなでも流星は流星だもん。今はめちゃくちゃ忙しいから、仕方ないよ。流星は頑張ってるもん。頑張りすぎて忙しすぎて不安定になる一歩手前なんだよ?私のこと、抱きたいと思わなくなったらそれこそヤバイんだよ?…でもまだ、こうしてる時は大丈夫。…私、何になるために大学に通ってると思ってる?一番大事な流星のこと、不安になんてさせない。私が、絶対流星のこと守ってあげるから!」
ついさっきまで、流星に甘えたい、
もっと一緒にいたいと思っていたのに、
口をついて出た言葉はまるで違っていた。
そんな私に驚く流星は、投げたペットボトルを
拾い上げ、そのまま床に座り込んだ。
うなだれたせいで、流星の目から
しずくがこぼれ、グレイのスウェットの膝を
濡らした。
寄り添い、そっと抱きしめた流星の
細い体が、震えている。
抱えた頭からは、私と同じシャンプーの香りが
した。柔らかい髪に唇をつけると、
初めて流星としたキスを思い出した。
「…押し潰されそうなんだ…不安で」
「うん…そうだよね」
「こんなんで、大学続けられるのか、国家試験受かるのか…体、もつのか…」
「流星。休憩してもいいんだよ?長い人生のほんの少しくらい、休んでもいいんだから」
「…できない。今できることをして、早く医者にならなきゃ…なあ、のぞみ?」
「ん?」
「おれは…間違えてないよな?」
鏡に映った肩や首筋には、強くつけられた
しるしが生々しく赤い。
「ごめん、なんかおれ、がっついてたよな」
「ううん。うれしかった。…流星の気が晴れるなら」
「え?そんな風にとられてたんだ?」
シャツを着た流星は、ベッドの端に座って
ミネラルウォーターを飲んでいた。
そのふたをキュッと閉めたかと思うと、
いきなり壁に投げつけた。
「りゅ、流星?!」
「…んだよ。気晴らしとか、ヤりたいだけとか思ってんの?おれ、そんなつもりないよ?のぞみは、そんなんで抱かれて平気なのか?」
「…平気。全然平気。どんなでも流星は流星だもん。今はめちゃくちゃ忙しいから、仕方ないよ。流星は頑張ってるもん。頑張りすぎて忙しすぎて不安定になる一歩手前なんだよ?私のこと、抱きたいと思わなくなったらそれこそヤバイんだよ?…でもまだ、こうしてる時は大丈夫。…私、何になるために大学に通ってると思ってる?一番大事な流星のこと、不安になんてさせない。私が、絶対流星のこと守ってあげるから!」
ついさっきまで、流星に甘えたい、
もっと一緒にいたいと思っていたのに、
口をついて出た言葉はまるで違っていた。
そんな私に驚く流星は、投げたペットボトルを
拾い上げ、そのまま床に座り込んだ。
うなだれたせいで、流星の目から
しずくがこぼれ、グレイのスウェットの膝を
濡らした。
寄り添い、そっと抱きしめた流星の
細い体が、震えている。
抱えた頭からは、私と同じシャンプーの香りが
した。柔らかい髪に唇をつけると、
初めて流星としたキスを思い出した。
「…押し潰されそうなんだ…不安で」
「うん…そうだよね」
「こんなんで、大学続けられるのか、国家試験受かるのか…体、もつのか…」
「流星。休憩してもいいんだよ?長い人生のほんの少しくらい、休んでもいいんだから」
「…できない。今できることをして、早く医者にならなきゃ…なあ、のぞみ?」
「ん?」
「おれは…間違えてないよな?」
