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20年 あなたと歩いた時間

第5章 20歳

最後は消えてしまいそうな、か弱い声で、
流星は初めて弱音を吐いた。
誰がどう思おうと自分の信じた道を
進んできた流星が、
初めて立ち止まろうとしていた。

「間違えてない。流星はいつだって正しい。世界中が間違えても、流星は正しいよ」
「おれには…無理なのかな、のぞみを幸せにすること…」
「流星、思い出して?十四歳の流星が、乗り越えた壁。十七歳の流星が、頑張って塾の学費を稼いだこと。十八歳の流星は一本に絞って受けた大学に、合格した。大丈夫。流星は何でもできる。それに私、十分幸せ」
「違う…こんな幸せじゃなくて…」
「わかってる。まだ、途中だから。私たち、そこに行く途中だから…」

そしてまた、私たちはひとつになった。
お互いを慈しむように、そっと。熱く。

そこ、ってどこだったんだろう。
今も時々考える。
でも、流星の考える『そこ』が、
もし私と同じなら、流星はちゃんと
私をしあわせにしてくれたことになる。
ちゃんと、わかっていてくれたんだ、と
随分あとになって、気付いたの。

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