秘密の兄妹
第10章 嫉妬
―翌朝―
「お兄ちゃん、じゃあ先に学校に行くね。」
「ああ…」
「…今日、武部さんにはっきり付き合えないって言うから…」
「…紫織、ちょっとこっちに来い。」
リビングを出ていこうとする紫織を呼び止めて、紫織のことを抱きしめる。
「……約束、さっそく守ってくれるの?一日一回ぎゅってするやつ……」
「ああ、守るよ。約束だからな……ちゃんと守る…」
本当は紫織に言われなくても、俺の方がこういうこと紫織に毎日してやりたかった。
「お兄ちゃん、あったかい…」
紫織は両手を俺の背中に回す。
俺たちはしばらく抱きしめあった。
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――
その日の下校の時間、高等部の校門の前で武部さんのことを待つ。
しばらくすると武部さんが校門から出てきた。
「紫織ちゃん!」
私は武部さんに頭を下げる。
「…この前の返事をしようと思って……」
「…どう?俺のこと選んでくれる…?」
武部さんが優しい顔で聞いてくる。
「ごめんなさい、やっぱり今の彼氏を裏切れません。本当にごめんなさい…」
「紫織ちゃんはそれでいいの?幸せになれるの?」
私は武部さんの瞳を見つめて答える。
「幸せとか、もうどうでもいいんです。ただ、相手の人を大切にしたいんです。」
「それに武部さんは、寂しいからって他の優しくしてくれる男の人にほいほいと乗り換えるような女の人、好きですか…?」
「それは…」
「ちゃんと今の彼氏と向き合ってみます。武部さんにもう心配をかけないように……。それが今の私が武部さんにしてあげられる精一杯のことです。」
「…………」
「武部さん、ありがとう。それと、さようなら…」
私は武部さんに笑いかけると、その場を後にした。