秘密の兄妹
第16章 壊れかけの心
学校の帰り道を歩きながら、紫織は黙っている俺に話しかけてくる。
「今日はごはん作るの遅くなっちゃうかも。お兄ちゃん、おなか空いてるよね?」
……こんなときまで、メシの心配なんてすんなよ……
「紫織、今日は作らなくていい。これから一緒にファミレスで夕飯食べて行こう…」
「…うん、分かった……」
★★★★★★
「…紫織、さっきから全然箸が進んでないみたいだけど大丈夫か…」
「…ごめん、ちょっと食欲なくて……」
「…………」
「くすっ」
紫織が突然笑う。
「どうした?」
「お兄ちゃん、口にハンバーグのソースついてる。子供みたい…」
「あっ?ああ…」
俺は急いで口元のソースを手でゴシゴシと拭き取る。
「ああ、そんなんじゃ手が汚れちゃうし、汚れも口のまわりに広がっちゃう」
紫織は俺の席の隣に移動して腰掛けると、お絞りと紙ナプキンで俺の口元を拭く。
「…………」
俺が黙っていると、紫織は優しい目で俺の瞳を見つめる。
俺は思わず紫織から目を逸らす。
「…ねえ、お兄ちゃん、もしかして今日起こった件で自分のこと責めてる?
保健室から帰ってきてから、私の目、まともに見てくれない…」
お絞りと紙ナプキンをテーブルの上に置くと、紫織は両手で俺の手を包み込むように握りしめる。
そして、俺に優しく微笑みかける。