秘密の兄妹
第4章 兄の想い
教室の外のベランダからグラウンドを見つめる。
この2日で、もう桜は散りはじめていた。
「悠人…」
…春樹か…今、顔見たくねえな。
「…何?春樹。」
春樹は俺の横に来ると、真面目な顔をして俺に聞いてくる。
「お前、紫織ちゃんの彼氏ってどんな奴か知ってる?」
来たか…その質問……
「知らねえ。でもあいつもう処女じゃねえよ。態度とか顔にすぐ出るから分かった。お前、残念だったな…紫織の処女奪うの狙ってたのに……」
春樹はベランダの手すりをぎゅっと握ると、散っていく桜の花を見つめた。
「別に処女だから紫織ちゃんのこと狙ってたわけじゃない…」
「本気で大事にしたいと思ったから、だからデートにも誘った。」
俺は鼻で笑った。
「ヤりたくて誘ったのに?」
「悠人…お前、自分の基準で物事をすべて考えるな。俺は紫織ちゃんをプラネタリウムに連れて行こうと思ってたんだ……」
「…………」
「何か、宇宙とか星空とか見たら自分の悩みなんてちっぽけなことだって思えるかな…と思って……。俺が紫織ちゃんの支えになってやりたかったんだ。」
……こいつ、本当にムカつく……
俺と正反対すぎてムカつく…
「でも、紫織ちゃんが幸せならいいんだ。俺じゃない他の男の手で幸せになることになっても……」
「ふうん。」
俺は春樹みたいには思えない。
紫織が春樹や他の男と幸せになるなんて許せないし、許さない…
紫織…お前は俺以外の男とは幸せになっちゃいけないんだよ……。