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雪女がサンタクロース

第1章 雪女がサンタクロース

 
 団右衛門は切なげに囁くと、嘉明の唇に迫る――が、嘉明は団右衛門の唇を手で押さえると、冷めた目で言い放った。

「耶蘇教は姦淫禁止、男色などもってのほかだぞ」

「……ふぁい?」

「同じだと言うのなら、きちんと規律は守らなくてはな。頑張れよ」

 思わぬ反撃に団右衛門は焦り、口を塞ぐ嘉明の手を取ると首を振る。

「いや、ここはいい雰囲気に流されて甘ーい口吸いだろ!?」

「妙な雰囲気作りのために、軽々しく法度を破るような物言いをするな。私は、その軽口を取り締まる人間なのだぞ」

「うっ……じゃあ、信者にならない! なにはともあれ抱かせてくれ!」

「隣に子どもがいるのに、なんて事を叫ぶか! 馬鹿者!!」

 素直に欲を口にすればそれも叱られ、団右衛門はうなだれる。嘉明は溜め息を漏らすと、団右衛門の背に手を回し呟いた。

「それで、私をどうやって温めるつもりだ?」

「へ?」

「冷える私をこのまま城に帰す気か? 風邪を引いたら、どう責任を取るつもりだ。ごたくはいい、早く……私を熱くしてくれ」

 頬を僅かに赤く染めた嘉明に、団右衛門はたまらず口付ける。熱は既に、心臓の奥からにじみ出ていた。

 戦国の世にも聖夜は存在し過ぎていく。この日だけは特別なのだ。皆平和に抱かれ、穏やかな時に酔いしれた。



おわり


 

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