雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
礼もそこそこに戻ろうとする嘉明だが、くしゃみに足を止められてしまう。すると団右衛門は立ち上がり、嘉明の頬に触れた。
「……冷たい。まあ今日は寒かったし、雪ん子も抱えてたもんな。風邪引くなよ」
名残惜しいのか、団右衛門は中々手を離そうとしない。頬に触れる温もりは心地良く、嘉明もまた、離れる気にはなれなかった。
「ま、しかしナタラもいいもんだろ? こんな楽しい祭りがあるなら、オレ信者になってもいいかもな」
「団、禁教令を忘れたのか? 耶蘇教は――」
「分かってる。けどさ、こんな風にあんたを独占出来る日なんて、他にないだろ」
これがもし許された祭りであれば、嘉明は表に引っ張り出され、一家臣である団右衛門が割り込む間もなくもてなされていただろう。一二三至っては妖魔だ。近付く事すら許されるはずがない。
「ナタラも、オレも同じ。表に出る事は許されない、秘めた存在だ。許されない者同士、慰め合いたくなる日もあるのさ」
「団……」
団右衛門は嘉明を抱き締め、冷えた体を包み込む。
「本当に、冷たい……な、温めてやるから、もう少しだけ、ここにいないか」