雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
塙団右衛門直之は、今でこそ加藤嘉明に仕え槍働きに勤しんでいるが、それまでに流浪の退魔師としてさまよっていた期間は長い。そのせいか、妙な出来事にまで詳しい傾向にある。そしてこの日の朝も、突如主君である嘉明が寝起きであるにも関わらず、無遠慮に現れ両手に抱えた酒を誇らしげに見せ付けた。
「嘉明、ナタラしようぜ!」
「……は?」
規律など知った事ではないと言わんばかりに、着崩した着物と軽い口調。質実剛健を心掛ける嘉明とは正反対の団右衛門は、目を丸くする主へ、自慢げに語り始めた。
「知らぬなら、教えてやろう嘉明! ナタラってのは伴天連達がデウスの誕生を祝う祭りでな、劇を披露したり、食いもん配ったり、贈り物をし合う日なんだ。どうだ、楽しそうだろ」
「伴天連? 団、お前は今年耶蘇(キリスト)教の禁教令が出たのを知らないのか? 秀吉様の配下である私が、それを易々と破る訳にはいかないだろう。大体お前は、いつから伴天連になったんだ」
「伴天連にはなってねぇよ。ただ、祭りは伴天連でない奴も参加していい決まりだから言ってみたんだ。なあいいだろ、城の中でこっそりやるだけなら、絶対ばれないって」