雪女がサンタクロース
第1章 雪女がサンタクロース
団右衛門は酒を愛おしげに抱き締め、嘉明にねだる。信者になった訳でないのなら、単に祭りに便乗して騒ぎたいだけなのだろう。短絡的な団右衛門に、嘉明は頭を抱え溜め息をついた。
「却下だ。秀吉の定めた法度を破る事は、決して許されない」
「でもさ、ナタラしたいのはオレだけじゃないんだぜ? なあ、一二三」
団右衛門が天井に呼び掛けると、天井から黄金の雫が三滴滴る。それは床に落ちると木の葉の着物を着た三人の子どもに姿を変えた。
「なたら、たのしそう」
「おいしいもの、食べたい」
「ね!」
三人の童は、団右衛門がお供にした妖魔・木の子である。妖魔と言っても木の子は時たま子どものような悪戯をするだけで、至って無害なのだ。団右衛門が加藤家に仕える事になってから、嘉明の周りは妖魔と人が共存する不思議の城と化していた。
「子どもを味方につけるとは、卑怯じゃないか?」
「オレは何も? ただナタラの話をしたら、あいつらが自分からすごーく興味を示しただけだぞ?」
団右衛門は目を逸らし肩をすくめ、白々しく言い訳する。しかし明らかにこれは、子どもで同情を釣る作戦だった。